SAIHATE

「ねぇー、あたしのこと、本当に知りたいの?」

村のコミュニティマネージャーのゆうき君が村人全員に課した課題、それはサイハテメディア用に自分のプロフィールと自己紹介を書くこと。

 

ほーう、有名人でも無いのにこんな何処にでも居る一般人の自己紹介を観て喜ぶ人が居るのか?物好きだなーっと、昼過ぎのサイハテラボ前に足を止めて、ニックネームミッキーの得体の知れない異邦人女性がスマホの画面をボーっと眺めながら考えた。

 

三部構成って言われても。人に理解してもらいたい願望が一切無い上、個人情報をなるべく漏らさない用に工夫しなきゃね。家族構成とか生い立ちとかは秘密にして、そしたら書けるのは仕事のみかな?良いでしょう、仕事が大好きだし、いくら来てても受けてやるぜ。と、仕事イコール遊び、遊びイコール仕事のミッキーがちょっとだけテンションが上がって、何から書こうかなと真剣に考え始めた。

 

「とりあえず、アーティストです。」

色々やってるなあたし、サイハテ村を起点にすると、村内あっちこっちに点在する壁画でしょ、




看板諸々でしょ、

紙皿で作った優しい明かり#カミアカリ でしょ、



CDディスクで作った#CD曼荼羅 でしょ、

ペットボトルで作った#モンスターボール でしょ、

その他絵とかの個展もでしょ、



写真展もでしょ…。

ミッキーが自分が作ったリストを確認して、ふーん…なかなかいい感じじゃナイスか!と思った。

 

プラス下界からのイベントのデコレーションのお誘い、

#カミアカリ のも、




ライブペイントのも、


壁画とかも、


グラフィックデザインのも、

看板のも…。

日々製作に追われる自分もある意味リア充じゃ無いかな?知らんけど。とミッキーがサイハテラボに入って、窓辺にある赤いソファで横になって、ラボ中で溢れる自分の作品を舐めるように見回した。

 

この日は天気が良くって、風が気持ち良いし、散り始めた桜の桜吹雪も綺麗だし、マーシーがパワーコメリに連れてってくれたおかげで#カミアカリ の資材を十分確保出来たし、チーちゃんから自家製の美味しいジンジャーエールを貰ったし、UGにもちょっかい出したし、仔犬とヤギかわいいし、今日も良か一日だな幸せーっと思いながら作業をひと段落終えて来たミッキーが危うくソファで眠りに落ちるところだった。昼過ぎのサイハテラボは本当に最高に気持ちが良い。

 

これはと言った特別な事などやってないのに、好きな事ばっかりやれて楽しい毎日を送れるなんて、本当に恵まれてるんだね、あたし。ありがとうよ、みんな、ありがとうよ、世界。ミッキーは目を瞑っつ、全ての存在に祝福を!っとちょっとだけ祈った、いつも通りに。一瞬で終ったのもいつも通りだけど、気持ちは本気。

 

「えっと、まだ読んでるの…?まさか」

本当に物好きだな〜、あなた。こんな自己紹介で満足出来たのかしら。とミッキーは不審そうな眼差しで画面の向こうの見知らぬ相手を想像してみた、どんな人だろう。

 

さて日も暮れたし、若干寒くなって来たので、いくら昼間が暖かいと言ってもまだ春だし。ミッキーは赤いソファから立ち上がって、お気に入りの作業用バッグを取って、横浜で買った古着のかわいいトラ柄の上着を出して羽織りながら自分のコテージを目指してサイハテラボを出た。